ある地方公務員のひとりごと

ある地方公務員のひとりごとです。

連携包括協定に対する懐疑的な目線1

 民間企業が自治体と連携して社会課題の解決に取り組むため、包括連携協定を結ぶ例は少なくない。御多分に漏れず私の働く自治体でも数社と個別の協定を結んでいる。本日付けの以下記事では、健康増進全般を切り口としながら最重要課題として感染症対策とコロナ禍に悩む地域への貢献を目的としていることが明らかとなっている。

 ではそもそも民間企業と自治体との包括連携協定とは何のために存在しているのか?一言でいえば、それぞれの強みを生かし弱みを補完するための繋がり方だといえる。

 以下の記事は2017年のものであり少し古いが、2016年時点で企業が地方自治体(ただし、都道府県のみ)と結んだ包括連携協定の一覧を眺めていると多種多様であることが分かる。

www.sustainablebrands.jp

 

 私が自治体職員として懸念するのは、彼ら民間企業が連携協定の中で受け止めている範囲が広ければ広いほど、一種の囲い込みに近いのでは?という疑念である。

 自治体ではよくある話だが、ある民間企業が自治体の仕様書作成を無償で引き受ける代わりに、その企業しか受けられない要件をするっと混ぜ込んでおき、まんまと入札に勝つというパターンを想像してしまう。

 包括連携協定は聞こえがよいが果たしてスムーズに言っているものなのだろうか?今後の記事では少し深堀してみたい。

インフラ企業の人事制度に親戚のような気持ちは芽生えるか?

 

www.nikkei.com

 ライフラインを提供する主体については、半官半民だったりもともとは官営だったり今も官営であるものなど、自治体に近いものを感じる。

 実際、明治時代に勃興し半官半民の企業を経て戦後に設立されたもの(東京電力)、明治時代に東京瓦斯局から渋沢栄一らに払下げられたもの(東京瓦斯)、水道はいまだ官営である。

 こうしてみるとライフラインの優先順位(水道>電気>ガスの順で重要?)と官営ー民営のグラデーションが分かってくる気がする。

 本題に入るが、東京ガスにおける人事制度改革を行った際の記述に賛同する部分と違和感を感じる部分が混在している。

改革の狙いは「一人ひとりが成果を出せる」制度をつくること。採用区分を営業や基盤技術、経営支援など6つに分け、15の専門コースを設けて課長になる直前まで専門性を高める仕組みを導入。定年退職後も視野に入れ、シニア層向けに6つのセカンドライフコースををつくりました。

  賛同する部分は、採用区分を細分化し、かつ専門コースを設けてマネジメント職の直前まで専門性を高める仕組みを構築した点である。

 現在のJTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー)では「総合職」、都道府県や基礎自治体では「一般事務」などとそれぞれ十把一絡げにまとめられて雑務に放り込まれている実情は今も続いている。

 東京ガスはこの記事だけを見ると純然たるジョブ型ではなく、ジョブ型とメンバーシップ型のいいとこどりのようにも見える。なぜなら定年後のキャリアの面倒まで見てあげているからだ。終身雇用を前提としたジョブ型おぜん立て系メンバーシップ型雇用とでもいうべきか。

 違和感を感じる部分は、まさにこの終身雇用前提が強く押し出されている面である。この記事の主人公である内田高史社長が人事制度改革を担当した当時は少なくともまだ終身雇用が前提であったはずだ。そして組合の力も強かった。この時代であれば老後の面倒も見てあげるのが当然だっただろう。しかし少なくとも現在はそのような時代は過ぎ去り、シニアは自分でその道を切り開いていくべきである。自治体職員もそのはずなのだが、一部の上層部が定年後にするっと外郭団体の管理職になっていたりするのでたちが悪い。

 すこし別の観点から自治体における人事制度の問題点を述べる。終身雇用が前提となる自治体職員においては少なくともプロフェッショナリズムを身に着ける機会を制度として提供しない限り、私のように新卒で一般事務職で入庁した職員の中だるみは締まらないだろう。主任研修で「中だるみの時期なので気を引き締めましょう」と一言言われたくらいでどれくらいの人が認識を変えることだろうか、と不思議に思ったものだ。

 と、辛辣に書いてはみたもの、自分自身、見事に中だるみ状態に陥って久しいのである。

 東京ガスの人事制度改革に右に倣えでは決してないが、自治体の採用も一般事務という雑駁なくくりではなくもう少し細分化し、採用後のプロフェッショナリズムの養成機会もある程度の型にはめてもよいのではと考える。一部の都道府県レベルの自治体では昔からそのような制度が運用されているとも聞くが詳細は今後調べることにする。

 ガス業界は、中東やオーストラリアからの輸入や都市ガスの自由化により競争に晒さられてきた歴史があるためその分自治体よりもずっと経営にシビアなのかもしれない。経営にシビアなのであれば、経営の主たる担い手となる人材の採用や育成にも自ずとシビアになるのではという仮説を持つに至った。

AIと自治体向けビジネス

 人工知能(AI)を用いて自治体向けビジネスが展開されて久しい。一方で私の役所では一向にAIやらRPAの話は振ってこない。AIに限って調べると、AIは主に画像認識、言語、音声認識の分野で実用化が進められているようだ。

 私が担っている部署の業務ではなかなか画像認識、言語領域での活用は見込みにくい。一方で音声認識は議事録取りなどで実用化されているらしい。「議事録作成支援システム」で検索すると沢山ヒットする。

robotstart.info

 たまたま本日(10/26)のプレスリリースとなっているようだが、この「AmiVoice」というサービス、古くはなんと2004年、静岡県沼津市役所においてAI音声認識技術は活用されていたようだ。議事録は結論・要旨のみならまだしも逐語録だとかなり時間を取られる。また細部まで聞き取る必要があり何度も聞きなおす必要があるので面倒である。この製品は別に学習データも必要としなさそう(必要なのかもしれないが)。

 今日の日経新聞1面に、三井住友海上火災保険ドライブレコーダーの映像をAIが検知しデータを集約して自治体に販売するビジネスをはじめた旨の記事があった(有料記事)。

www.nikkei.com

 我が役所でも道路の点検は現在自治体職員が中心となってパトロールを実施したり、住民の通報によって確認している。道路行政には関わったことがないため詳しいことは分からないが、間違いなく点検作業のあり方は変わるだろう。

 特に地方部の役所では公用車が多いが、定期的に自治体内を周回する業務だけのために延々と公用車を使用するのはなんともコスパが悪い。しかも目視なので見逃しの可能性も否定できない。

 ・・・とここまで書いて気が付いたが、ごみ収集車にドライブレコーダーをつけてデータを収集すれば良いのではないか?とひらめいた。データの集約と分析は結局委託しないといけないがデータ集めは役所が担う分少し圧縮できるのではないかと思った。むしろ、三井住友海上保険はどうやってデータを確保しているのだろうかということが気になったのであった。

 このようにAIが日常業務に役に立つ機会はこれからも増えていくに違いない。偉そうなことを言うと自治体職員はこういうものに弱いかアレルギーがあるかで体感では6~7割程度を占める気がする。その「弱さ」やアレルギーはどのようにすれば克服できるのだろうか。究極は役所の担う事業に対する関心の低さなのだろうかとも思うが、現状答えは持ち合わせていない。

 

仕事がつまらなくって

 前から薄々感じていたが、いよいよ仕事がつまらなくなった。基礎自治体の職員というものはかくも地味なものなのか。毎日のルーティンワーク。目立たないがなくなりもしない事務事業。代り映えしない役所。意味のないクレームをつける住民。目の付け所がズレ過ぎる議員。疲弊する地域経済。このような環境で私が一体何の役に立てるというのだろう。

 ここ数年ルーティンワークがメインの部署のおかげで暇が生まれた。私にとって余暇は悩みのタネであり、今このように苦しんでいる。私でなくでも回る業務、できる仕事。私はなぜここにいるのだろうか。「ここではないどこか」があるのだろうか。

 とはいえ、入庁してから10年以上経つのにも関わらず、私にとってずっと地方自治体とは謎の多い組織であり続けている。自分が家庭の事情で「ここではないどこか」から動けないのだとしたら、せめて自分がいる場所のことを少しでも深く理解することが私の人生にとって建設的だろうと考えた。

 そこで、ランダムに日記をつけることにした。私の基礎自治体に対する思いを綴ることで何か世間の役に立つとは到底思わないが、しかし、せめて鎮魂歌として書き続けよう。そして願わくば、少しでも地方自治というものの深みにハマってみたい。