ある地方公務員のひとりごと

ある地方公務員のひとりごとです。

インフラ企業の人事制度に親戚のような気持ちは芽生えるか?

 

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 ライフラインを提供する主体については、半官半民だったりもともとは官営だったり今も官営であるものなど、自治体に近いものを感じる。

 実際、明治時代に勃興し半官半民の企業を経て戦後に設立されたもの(東京電力)、明治時代に東京瓦斯局から渋沢栄一らに払下げられたもの(東京瓦斯)、水道はいまだ官営である。

 こうしてみるとライフラインの優先順位(水道>電気>ガスの順で重要?)と官営ー民営のグラデーションが分かってくる気がする。

 本題に入るが、東京ガスにおける人事制度改革を行った際の記述に賛同する部分と違和感を感じる部分が混在している。

改革の狙いは「一人ひとりが成果を出せる」制度をつくること。採用区分を営業や基盤技術、経営支援など6つに分け、15の専門コースを設けて課長になる直前まで専門性を高める仕組みを導入。定年退職後も視野に入れ、シニア層向けに6つのセカンドライフコースををつくりました。

  賛同する部分は、採用区分を細分化し、かつ専門コースを設けてマネジメント職の直前まで専門性を高める仕組みを構築した点である。

 現在のJTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー)では「総合職」、都道府県や基礎自治体では「一般事務」などとそれぞれ十把一絡げにまとめられて雑務に放り込まれている実情は今も続いている。

 東京ガスはこの記事だけを見ると純然たるジョブ型ではなく、ジョブ型とメンバーシップ型のいいとこどりのようにも見える。なぜなら定年後のキャリアの面倒まで見てあげているからだ。終身雇用を前提としたジョブ型おぜん立て系メンバーシップ型雇用とでもいうべきか。

 違和感を感じる部分は、まさにこの終身雇用前提が強く押し出されている面である。この記事の主人公である内田高史社長が人事制度改革を担当した当時は少なくともまだ終身雇用が前提であったはずだ。そして組合の力も強かった。この時代であれば老後の面倒も見てあげるのが当然だっただろう。しかし少なくとも現在はそのような時代は過ぎ去り、シニアは自分でその道を切り開いていくべきである。自治体職員もそのはずなのだが、一部の上層部が定年後にするっと外郭団体の管理職になっていたりするのでたちが悪い。

 すこし別の観点から自治体における人事制度の問題点を述べる。終身雇用が前提となる自治体職員においては少なくともプロフェッショナリズムを身に着ける機会を制度として提供しない限り、私のように新卒で一般事務職で入庁した職員の中だるみは締まらないだろう。主任研修で「中だるみの時期なので気を引き締めましょう」と一言言われたくらいでどれくらいの人が認識を変えることだろうか、と不思議に思ったものだ。

 と、辛辣に書いてはみたもの、自分自身、見事に中だるみ状態に陥って久しいのである。

 東京ガスの人事制度改革に右に倣えでは決してないが、自治体の採用も一般事務という雑駁なくくりではなくもう少し細分化し、採用後のプロフェッショナリズムの養成機会もある程度の型にはめてもよいのではと考える。一部の都道府県レベルの自治体では昔からそのような制度が運用されているとも聞くが詳細は今後調べることにする。

 ガス業界は、中東やオーストラリアからの輸入や都市ガスの自由化により競争に晒さられてきた歴史があるためその分自治体よりもずっと経営にシビアなのかもしれない。経営にシビアなのであれば、経営の主たる担い手となる人材の採用や育成にも自ずとシビアになるのではという仮説を持つに至った。